紀伊じょうろうほととぎす

古来より、紀伊半島南端の古座川、那智山、熊野川渓谷の岸壁に自生していた熊野地方特有の山野草です。

ユリ科の多年草で、ホトトギス属の中でもひときわ優雅な花で、古くから茶花として茶人に親しまれてきました。

 

名前の紀伊(キイ)とは紀伊半島、上臈(ジョウロウ)とは京都御所の職名で優雅な貴婦人などを意味し、それが由来とされています。しかし、環境の変化や乱獲などにより、現在岸壁等に自生しているものはごくわずかとなってしまい、環境省レッドリストの絶滅危惧IB類(EN)の指定をうけています。

 

佐本は今では「キイジョウロウホトトギスの里」といわれるようになりましたが、その物語のはじまりは30年以上も前にさかのぼります。

 

昭和50年、佐本西野川の山中茂さんが、道路脇に刈り取られ捨てられていた2、3本の苗を大切に持ち帰り、自宅の石垣に植えたのです。

もしやと思いながら心を掛けて育てたその苗は、その年の10月に可憐で美しい花を咲かせました。

その時、その花を見た山中さんの心は、幸せな気持ちに満ちあふれたといいます。

そしてその時から、山中さんの仕事を持ちながらのチャレンジが始まりました。

 

自生の山野草を栽培するというのは、大変な努力のいることです。

さまざまな試行錯誤の末、平成2年には500本、平成6年には1000本以上もの株が石垣に咲きそろうまでになりました。

その頃から、「我が家の石垣も・・・」と、集落の人たちが苗を譲り受け育てるようになり、少しずつ、少しずつ、その花の輪は広がってゆきました。

 

私はこの花を初めて見たとき、「美しい」と心から思いました。

それは花の美しさはもちろんのことですが、それ以上に山中さんが、集落の人たちが、これまでに費やして来た時間、この花に抱く想いの強さに対するものだったのかもしれません。

 

「キイジョウロウホトトギスの里」佐本へぜひお越し下さい。

すさみ町佐本の紀伊じょうろうほととぎすの見所マップです。
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